2018年 04月 18日
いつのまにかいつかの風が フィニ |
一日中降り続けた雨も上がった最終日。
ディナーはもちろん彼のル シャトーブリアンで。
満席の店内の隅のバーコーナーを用意してもらって愉しみました。
最初に出てくるグジェールはもともとは僕のレシピだったけれどもウチよりもずっと美味しいものに進化していました。
セビーチェ、アンチョビ、ブイヨンと続くどの料理もピントがバシッと決まっていて、見た目単純な構成なのに味わいは重層的で凄かった。
初めて来た時と同じように一皿ずつ彼自ら運んでくれたのですが、昔のような尖った『どうだ!』という挑発的な感じでは無く『どうぞー』と母親が子供に食べさせるような自然な感じで皿を置いていくようになったのも印象的で、それはきっと彼の中で流れた時間がそうさせているのでしょう。
楽しいだけで料理を続けていたはずが経営者になり、家族ができ、注目を浴びて新しいものを生み出し続けることにはどれだけのプレッシャーがあったことでしょうか。
忘れるために浴びるほど飲み羽目を外したこともあったでしょう。
でも今日の彼は違う。
二番手のアントニオがさっきやって来て『今日のメニューは特別でイナキめちゃ気合い入れてるよ。だから数日飲みすぎないようにしてたんだよ』と教えてくれて泣きそうになりました。
色々なものに振り回されても彼は今も調理場に立つ。昔みたいに酔っ払っていても何とかなるわけじゃないので心身を整えて一皿に向き合っている。相変わらず多忙ではあるけれども何が一番大切かを彼は知っているのでしょう。いつのまにか彼は随分とオトナになっていました。
僕も見習わなければならない。
知り合ってからずっと憧れ続けている友人に少しでも近づくために。
フレッシュマンダリンのソルベとハーブオイルのデザートを食べいつかと同じように厨房へ感動を伝えに😄
営業も終盤で手の空いてきた彼が『外で一杯やろうぜ』と誘ってくれたので店の前で乾杯。
話しているとあちこちから彼の友人がやってきてその度に僕は当てもなく立ち尽くすのでした。
不意に。
いつのまにかいつかと同じ風が僕を包んでいました。
そこに立つ僕はもういつかの僕ではないけど。
………
結局場所を変えながらも2人で飲みまくり明け方ホテルに戻った後せっかく食べた料理もワインも全部リバースしたことは彼には内緒です。
飛行機の中でも、帰ってきてからも三日酔いで気持ち悪かったことは家族には内緒です。
by anonyme-kobe
| 2018-04-18 15:37