2018年 04月 17日
いつのまにかいつかの風が 永遠! |
50000人がエントリー、43000人が出走したパリマラソンのスタートはシャンゼリゼ大通りから。
号砲を待つ人達は実に多国籍。
そしてそれぞれのキャラクター。
いつのまにか調整不足で完走すら自信の無かった僕は自分よりも遅そうな人を探していました。
マラソンに不向きなシューズを履いている人。
僕よりも年配な人。
僕よりも太っている人。
その人のことなど何ひとつ知らないのに僕からの目線だけで自分よりも弱そうな人を探していました。
初めての修業先に向かう列車の中で国籍や人種を根拠なく優劣をつけようとしたいつかと同じように…
そんな屈折した僕を完全に無視してスタートラインは開かれました。
想像以上に足裏に食い込む石畳みの街を想像以上のスピードで走りながらバスチーユ広場、ヴァンセーヌの森、セーヌ川、エッフェル塔へと相変わらず肩をすぼめながらうつむき進む僕に前を向かせてくれたのはあの頃にあの頃の僕を見下していたと思っていたこの国にいる人達でした。
『アレ (行け!) ジャポネ!』
『KAKO! クラージュ(頑張れ👍)』
『bravo!』
『respect!』
あらゆる国の異なる個性を持つそれぞれの人を。
それぞれの国で異なる個性を持つあらゆる人が。
僕だけではなく全てのランナーを応援してくれている。
いや、走っている人同士も互いに言葉にならない声をかけている。
前にいる人も後ろにいる人も。
『頑張れ』
『頑張ろう』
『行こう。一緒に』
応援もまばらな最期の難関であるブローニュの森で僕はようやく気づきました。
未だに僕はこの国でやり遂げたことなど一つもないことに。
そんな僕にも時々(そしてとてつもなく)この国の人たちは優しい。
本当に戦うべきは歪んだ目で見た他人では絶対にありえないことを。
本当はいつだってそれは自分自身でしかないことを。
言葉も仕事も出来ないいつかの僕を馬鹿にして踏みつけてもいつだってフォローしてくれてウインクで許してくれたいつかの仲間たちを思い出しながら、パンパンに張った太腿を叩き、途中に貰ったドライレーズンを頬張りながらなんとかゴールにたどり着くことができました。
完走メダルを受け取るために並ぶ僕の体温をパリには珍しく雨を予感させる湿った風が奪っていきました。
疲れ切った身体で地下鉄を待つ間に久しぶりにいつかの風の匂いがしました。
by anonyme-kobe
| 2018-04-17 01:44